労務管理

法令違反8割 ツアーバス事業所への集中監督がありました

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厚生労働省は、今年1月に長野県で起きたスキーバス事故を受けて、ツアーバスを運行する貸し切りバス会社を対象に集中監督を行いました。

法令違反85%厚生労働省、全国のツアーバス

今年1月に起きた長野県軽井沢町のスキーバス事故で、厚生労働省は25日、ツアーバスを運行する貸し切りバス会社対する「集中監督」で労働関係法令違反の有無を調べた結果、85%に当る166事業所で違反が認められたと発表した。同省は書面で是正勧告した。

(日本経済新聞2016年4月25日)

主に今年の2月から3月にかけて、全国の196事業所を選び抜き打ちで集中監督が行われたようです。厚生労働省から「ツアーバスを運行する貸切バス事業場に対する緊急の集中監督実施状況」が公表されていましたのでご紹介します。

集中監督の結果、バス運転者に関して労働基準法等の法令違反が認められたのが84.7%に当る166事業所となり多くの事業所にて違反が見られました。

主な法令違反としては、労働時間48.5%、健康診断19.9%、休日7.7%となっています。

また、バスを運転する者については「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)というものがあります。この告示は労働基準法では規制が難しい時間に関する基準を大臣告示として次のように定めたものです。

◯拘束時間(始業から終業までの時間(休憩時間含む)

  • 総拘束時間 原則4週間平均で1週間65時間以内
  • 1日の拘束時間 原則13時間 最大16時間

◯休息時間(勤務と勤務の間の自由な時間)

  • 原則 継続8時間以上

◯運転時間

  • 2日平均で1日9時間以内

◯連続運転時間

  • 4時間以内

◯休日労働

  • 2週間に1回以内、かつ4週間の拘束時間及び最大拘束時間の範囲内

この改善基準告示に対する違反が認められたのは60.7%に当る119事業所ありました。内訳としては最大拘束時間が41.8%で最も多く、以下、連続運転時間27.6%、総拘束時間21.9%、休息時間20.9%と続いています。

具体的な事例については次のようなものがあります。

  1. 時間外・休日労働に関する労使協定(以下、「36協定」という。)で定める限度時間(1か月71.5時間)を超えて、1か月に約130時間の時間外労働を行わせている。[労働基準法第32条(労働時間)違反]
  2. 4週間を平均し1週間当たりの拘束時間が65時間(労使協定締結時71.5時間)を超えている。[改善基準告示第5条(拘束時間)違反]
  3. 1日の拘束時間が原則13時間(最大16時間)を超えている。[改善基準告示第5条(拘束時間)違反]
  4. 常時使用する労働者を雇い入れるときや、1年以内ごとに1回、また深夜業に従事する者ついては、6か月以内ごとに1回定期健康診断を実施していない。[労働安全衛生法第66条(健康診断)違反]
  5. 36協定の締結・届出を行わずに時間外労働及び休日労働を行わせている。[労働基準法第32条(労働時間)及び同法第35条(休日)違反]
  6. 休日労働及び深夜労働に対する割増賃金を支払っていない。[労働基準法第37条(割増賃金)違反]

以前のエントリーでバス運転者の実態を取り上げた際には、1日の拘束時間について60%近くが違反を経験しており、運転時間については78%が違反をしているという結果がありました。

スキーバスツアー事故から見えてくる闇

今回の集中監督結果からもわかるように、やはり多くの事業所にて法令や告示違反の常態化があるようです。

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