就業規則

長時間労働による過労死は誰のせいなのか

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 今月、大手広告代理店の電通の新入社員だった女性が昨年12月に自殺し、労災に認定されたというニュースありましたが、「新入社員」「女性」「長時間労働」「パワハラ」「セクハラ」などのキーワードが様々なメディアで取り上げられていました。

なかには女性の家庭環境に触れて書かれているものもあり、「会社に入りこれから母親に楽をさせてあげたい」という言葉を目にすると歳のせいかやるせない気持ちになります。

実は、社員の過労死自殺は今回が始めてではなく平成3年にも入社2年目の男性社員が亡くなっており、遺族が起こした裁判の賠償金が1億を超える高額なものとなりました。

ここで注目されたのは、賠償金の額だけでなく企業による安全配慮義務があるということです。ここから長時間労働による健康状態の管理も企業が配慮しなければならないとなっています。

話は変わりますが、女性の記事に注目が集まったことによって、平成25年にも30歳の男性社員が長時間労働による過労死があり労災認定されたという記事まで出てきました。

広告業界と長時間労働

広告業界最大手でもあり、給与水準も高く世間で言うところのブラック企業とはかけ離れているとも思われるところですが、どうしてこのような不幸な事故が続くのでしょうか?

そんなことを考えていたら、元電通の社員による広告業界の働き方について垣間みる記事がありました。

広告業界という無法地帯へ

もちろん電通内でも長時間労働は問題となっているようですが、クライアントの要求もあるため一筋縄ではいかないようです。ちょっと長くなりますが引用します。

理由のひとつは、「電通は自社でモノを作って売っている会社ではない」ということだ。自社の工場を動かす会社なら、製造量を制限して「はい、ここまで」と電気を消して、社員を帰らせれば済むかもしれない。しかし、広告業界というのはクライアント企業から仕事を請けて初めて仕事が発生する受注産業である。

僕がいた頃でも、「残業は月○○時間まで」、「夜十時以降の残業をする際は、上長の承認を事前に受けること」などといった非現実的な規則が導入されていった。夜九時に営業から電話があって、「あの件、変更になった! 明日までに代案を出せって!」と言われたりしたなら、「上長の許可が得られませんので対応できません」と答えろとでも言うのだろうか。それを営業はクライアントにどのように伝えるというのか。また、営業は、そう言うコピーライターに次に仕事を頼みたいだろうか。

先人たちの努力により「大抵のことはやり遂げてくれる」との評価を築いた電通は、いつしか「どんな無理を言ってもいい存在」に成り下がってしまった。

日本企業の広告宣伝部、広報といった部署が重要視され肥大化する中で、広告主の発言権が際限なく大きくなってしまい、キーマンをあたかも神のように扱うのが広告業界の悪癖となってしまった。もちろん、靴を舐めるようにして増長を許してきた電通、博報堂を始め、各広告会社の責任も免れないだろう。拝跪して言われたことを聞き、ノタ打ち回って仕事を完遂することが優れたサービスだとして競争してきた結果が、今日の姿だ。(中略)

「夜十時以降の残業禁止」とか「電灯消すから帰れ」と、勝手に決めるのはカンタンだ。では、目の前の仕事と雑用をどうすればいいのか。出口ばかり塞がれても、入り口から流れ込んでくるものを制限しないと溢れ返るではないか。どの組織でもそうだろうが、仕事の大半は生み出す作業ではなく、捌くことだ。メールを、書類を、案件を。

クライアントは容赦なく「あれしろ」「これもしろ」「明日までに」「朝イチで」と申し付けてくる。営業は困っている。どうすればいいというのだ。(以下略)

要するに広告業界は、クライアントのムチャな要求に応え続けているうちに長時間労働やむ無しという体質になっているようです。

お客様の言うことは絶対か

こんな話を読むと、昨今話題の「おもてなし」に共通するお客様の要求には応えなければならない風潮にも関係あるような気がします。

お金を払うお客様の言うことに応えようと自らを犠牲にする姿勢はある程度は理解できますが、それが社員の過労死につながるようでは本末転倒とも言えるでしょう。

東京オリンピックを控え「おもてなし」というキーワードに注目が集まりますが、お客様の要求に対して果たしてどこまで応えるのがふさわしいのか改めて考える時期に来ているのでしょう。

ブログを書く際のポリシーとして、良いことについては企業名を書くけど、是正勧告や労災事故などマイナスになることの場合、企業名を書かないこととしていますが、今回は業界最大手でもありクライアントへの影響力も大きいものと考えられます。

そのため、たとえ広告業界の働き方そのものに問題があったとしても、大手が変われば、より規模の小さい中小企業も含めた業界の働き方が変わるであろうことを期待して、敢えて企業名をあげておきます。

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