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最高裁が企業のセクハラ防止対策を評価

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会社がセクハラ発言を繰り返した男性社員に対する懲戒処分のあり方について、最高裁判所による判断が示されました。

 

セクハラ防止について就業規則等で定めている会社が多くなっていますが、実際に懲戒処分となると判断に迷う場合があります。この判決は今後の企業の対応についても参考となりそうです。

水族館の運営会社で管理職だった男性社員が平成22年11月頃から23年12月までの間、20歳~30歳代の女性派遣社員に対してセクハラ発言を繰り返したため、同社が事情聴取を行なった上で懲戒事由として出勤停止処分、さらに出勤停止処分の結果として降格処分となり給与等の減額となりました。今回の裁判は、この処分を不服としたものです。

会社におけるセクハラ対策

水族館では、従業員の過半数が女性であり水族館を訪れるお客さんも約6割が女性のため、職場におけるセクハラ防止を重要課題として位置付けていました。

就業規則においては、社員の禁止行為のひとつとして「会社の秩序又は職場を乱すこと」が掲げられており、就業規則に違反した場合には、その軽重により戒告、減給、出勤停止、懲戒解雇の懲戒処分を行うと定められていました。

また「就業規則などに定める服務規律にしばしば違反したとき」には、減給または出勤停止に処するものとされていました。

さらに、毎年セクハラ防止等に関する研修を行い、社員には参加を義務づけており、「セクシャルハラスメントは許しません!!」と題する文書を作成して配布、職場に掲示するなどの取組を行なっておりました。

これらから最高裁の判決が会社側の主張を容認したのは、次の点にあるようです。

職場におけるセクハラ防止を重要課題と位置付け、セクハラ禁止文書を作成してこれを従業員らに周知させるとともに、セクハラに関する研修への毎年の参加を全従業員に義務付けるなど、セクハラ防止のために種々の取組を行なっていた。

男性社員は研修を受けていただけでなく、管理職として会社の方針や取組を十分に理解し、セクハラ防止のために部下職員を指導すべき立場にあった。

女性社員に対し、職場内において1年余にわたり多数回のセクハラ行為等を繰り返しており、男性社員の行為は職責や立場に照らしても著しく不適切である。

セクハラ被害者の実態に配慮

さらに女性社員がセクハラ行為に対して明確に抗議しなかった点についても触れています。

女性社員が明白な拒否の姿勢を示さなかったため、このような行為が許されていたと考えていた点については、「内心でこれに著しい不快感や嫌悪感を抱きながらも、職場の人間関係の悪化等を懸念して、加害者に対する抗議や抵抗ないし会社に対する被害の申告を差し控えたりちゅうちょしたりすることが少なくないと考えられる

セクハラを受ける立場が弱い場合は特に、人間関係の悪化等を理由に抗議することができない場合もありそうです。

会社がセクハラを軽視するのもリスク

先日は、セクハラ行為により退職を与儀なくされた元従業員女性が、会社に対して2700万円の損害賠償請求を起こした裁判を取り上げました。セクハラ防止に対して企業が真剣に取り組まなければ、同様の事案が増加すると考えられます。

セクハラが労務リスクになる裁判で1300万円の和解額

今回の最高裁の判断によってセクハラ防止に取り組んでいる企業であれば、セクハラ行為の加害者から不当な処分だと訴えられるリスクが減少するという前例となりそうです。

セクハラ防止に対して意識的に取り組む必要があるでしょう。

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