有期労働契約

東京メトロの裁判にみる仕事内容と給料の決まり方について

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Yahooニュースで東京メトロの契約社員が訴訟を起こしたことが取り上げられていました。

「正社員と同じ仕事なのに」東京メトロの契約社員が「格差是正」訴訟を起こしたワケ

これに対して書かれたコメントを見てみると、正社員と派遣社員、非正規社員などがごっちゃになっているようです。まあこのあたりが紛らわしいのは分かります。

今回、訴訟を起こしたのは、働いている会社と有期の労働契約を結んでいる契約社員となります。だから派遣社員ではありません。

それから、正社員や非正規社員というのも法律で決まった言葉でありません。決まっているのは、労働契約の期間が決まっているかどうかです。

通常、正社員と呼んでいるのは、労働契約の期間が決まっていない社員のことであり、非正規社員というのはそれ以外の社員を指しています。

非正規社員には、契約社員やパート、アルバイト、派遣社員などがあります。この場合、契約期間を定めていない場合もみられます。契約期間で判断しながら、契約期間を定めていないパート社員を正社員と呼ばないところが、話をややこしくしている原因でもあります。

それはともかく裁判となったのは、2013年に労働契約法が改正されたことが関係しています。正社員と有期契約社員との格差を是正するために法改正されました。

有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めのあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。(労働契約法20条)

要するに有期契約社員と正社員とで労働条件が違う場合は、仕事の内容や責任、異動などの事情を考えて筋が通っていなければだめです、というものです。

仕事内容が同じかどうかはともかく、責任や異動などは有期契約社員と正社員では違うとも思いますから、今後の注目が集まっているわけです。

給料は何を基準に決まるか

給料を決める場合に多いのが、一定の社内序列をもとに決める方法です。例えば、社員等級で1級から5級などの区分けです。

それぞれの社員等級と給与水準を関連させて、昇給したりしているのではないでしょうか。もちろん社員等級の決め方は、在籍年数や年齢や能力など会社ごとにルールを決めていることでしょう。

そこで問題となるのが、正社員が1級から5級まであるのにパート社員はこの等級に当てはめていないというケースです。パート社員は時給制だったりしますし。

つまり、この会社では同じ仕事をしていても社員等級に基づく正社員と基づかないパート社員がいる訳です。本音としては、だってパート社員は一時的だし、評価制度なんて考えてないよ、というところでしょう。

さらに問題に追い打ちを掛けるのが、裁判で会社が負けた場合です。会社としては、給与の決め方を社員等級を基準としているのに、仕事を基準に決めなければだめということになります。

これまでは、年功序列制度が主流だったので長く働くことによって仕事をする能力が上がり、それに基づいて給料も上がっていきました。

もしこれが裁判で、仕事内容が同じなら給料も同じでなければ駄目となったら、仕事の内容に応じて給料を決めなければならなくなります。そうなると社員の評価を仕事をこなす能力から仕事内容へと変えなければなりません。

こうなると、一つの会社で長い間働いていても給料は今の担当している仕事で決まるようになります。当然ながら、仕事が簡単になれば給料が下がります。

この裁判は法律と企業の人事制度の矛盾点を含んだ問題でもあるわけです。裁判所にそこまでの権限があるのでしょうか。そういう意味でも注目するべき訴訟というわけです。

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